アズビル株式会社様(3Dプリンタ)

2021.3.9

3Dプリンタ


Markforged社3Dプリンター「X7」を活用した試作や治具製作で、ものづくりのスピードを加速

Markforged社3Dプリンタ「X7」の活用方法について、アズビル株式会社 商品開発部 試作技術Grの石川様にお話を伺いました。


アズビル様で使用されているMarkforged X7

【アズビル株式会社 商品開発部 試作技術Gr】


Markforged X7を使用しているアズビル様の商品開発部 試作技術Grは、社内のものづくりを担う部署で、主に工作機械を用いた切削加工、設備の組立・配線、治具設計、金型設計製作を業務としています。

今回、お話を伺った石川様は、元々、試作相談窓口で依頼者に加工のアドバイスや納期の調整をしながら、治具設計から製作までを行っていらっしゃいましたが、2019年からは3Dプリンタを使ったものづくりを実施し、社内に3Dプリンタを推進する仕事へとシフトされていきました。

【Markforged X7とは】


アメリカの3DプリンタメーカーMarkforged社のIndustrial Series 3Dプリンター「X7」。連続炭素繊維などを用いて、アルミと同等の強度を持ったパーツを製作することができます。造形サイズは大きく、本格的な少量・中量生産にも対応します。また、レーザー計測機能により、造形中に検査をすることで造形物の品質保証が同時に行える、産業用3Dプリンタです。

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導入の背景:スピードの重要性と業務効率化

― 3Dプリンターはどういった経緯で導入されましたか?

石川様:
私達の価値はスピードです。3Dプリンターに魅力を感じたのは、ものづくりを行なうスピード感で、切削加工で人が機械に張り付いていなければならない場合でも、3Dプリンターならどのような形状であれ自動で造形できます。その分、人が行う必要のある作業をして試作業務の効率化を図りたいと考えていました。

コンシューマ向けの3Dプリンターを購入したことはありましたが、産業用の3Dプリンターを試作業務に活用する目的で初めて社内で提案したのは2016年4月頃でした。その頃は時期尚早と言われ、設備導入は見送られました。また、アウトソーシングで試し造形を行った2017年にも提案をしましたが、導入までは至りませんでした。2018年に社内ニーズ調査を行って費用効果を算出、アウトソーシングで3Dプリンターの効果を社内で理解してもらい、やっと導入することができました。



― 数ある3Dプリンターの中でもなぜMarkforged X7を選ばれましたか?

石川様:
社内のニーズを調査した上で、必要な造形タイプはFFF方式であると考えていました。なぜかというと、ずばり、強さが必要だったからです。私たちの職場は切削加工を行っているため、チャッキングに耐えられる強さが必要でした。インクジェットや光造形だと強さが足りないと判断したのです。

当初はABS、PLAが造形できるタイプのものを選定しようとしましたが、MarkforgedのOnyx(ナイロン母体に短繊維炭素繊維を混合した材料)と他材料を比較した場合の材料の固さ、造形の美しさ、材料コストの安さが決め手となり、Markforged社のプリンターを買おうと決めました。

中でもX7はレーザー測定機能が付きMark Two(Markforged社3Dプリンター)よりもXY軸の位置決め精度が高いため、私たちのニーズにマッチしていると考えました



― なぜ代理店にテクノソリューションズを選んでくださったのですか?

石川様:
導入機種を選定している時にテクノソリューションズ様よりMarkforgedをご紹介していただき、一緒に3D Printing Corporation(以下、3DPC)様をご紹介していただきました。東京工業大学にある3Dプリンターラボ(3DPCと東工大が連携した研究所)まで行き、実機のご説明とこれからの3Dプリンターを使ったものづくりのアドバイスをいただきました。私1人では最適なプリンターの運用は難しかったのでテクノソリューションズ様には当時は大変助けられました。今でもテクノソリューションズ様、3DPC様両社にはサポートしていただいています。

運用方法と効果:治具製作・モックアップに活用。ものづくりに関わる人々の行動にも変化

― X7はどのように運用されていますか?

石川様:
最も使っている用途は治具です。切削加工で使用するチャッキング治具はもちろんですが製品を組立てる治具も作っています。

他にも新製品のモックアップ、図面のないワークの金型製作前チェックのためのモクアップ、新製品フィールドテスト品のセンサーカバーなどに使っています。

また、通常のものづくり相談を行いながら、3Dプリンター推進活動を行っています。



― X7を導入したことで、どのような効果がありましたか?

 石川様:
最も効果を感じているのはものづくりに関わる方が、まずやってみようと行動に移せていることです。今までは、2次元図面を描いて、切削加工するために最適な形状は何かを考える工程が必要であり、数日かかることもありました。それが3Dプリンターを使うアディティブマニュファクチャリングだと、自分のイメージを3Dモデリングすれば形にでき、改善点も翌日には試せるようになりました

<具体事例:壊れたフライス盤ハンドルを3Dプリント。翌日には使用可能に>

石川様は、部署内で使用しているフライス盤のハンドルが壊れた際に、X7を使ってハンドルを新しく3Dプリントし、壊れたものと交換されました。



― 壊れたフライス盤のハンドルについて、既存の交換部品などで対応するのではなく3Dプリントしようと思った理由は何ですか?

石川様:
最も必要なのはスピードです。ハンドルが壊れてしまい、テープなどで簡易的な補修をして使用してましたが、安全面、作業性に問題があり早急に補修する必要を感じました。

機械自体が古くメーカーでも対応していないので部品調達することができないこと、また、Onyxを使用すれば3Dプリンターで対応できると判断し、3Dプリントで作製しました。



― 作製方法

設計方法
ノギスを使ってリバースエンジニアリング、そして3Dモデリングを実施。金属部と樹脂部は圧入狙いで回転止めはキー溝にした。

使用材料
Onyxを使用。当初カーボンファイバーを入れようと思ったが、なるべくコストを抑えたかったのでまずはOnyxで造形すると決めた。

作成時間、コスト
合計34時間で作製。



制作時間

・モデリング
(リバースエンジニアリング) : 1時間
・ワイヤーカット段取り    : 1時間
・加工   : 5時間
・造形時間 : 26時間
・組み立て : 1時間

  合計  : 34時間

― ハンドルを作製するにあたり工夫した点は何ですか?

石川様:
金属部品との嵌め合いがあったので、樹脂の弾性変形を利用して圧入しました。また、見た目もできる限りスタイリッシュにしました。



― 3Dプリントしたことによるメリットは何でしたか?

石川様:
スピードです。故障した翌日には品物が完成しました。この件で切削加工を担当している技能者の方々にも3Dプリンターのものづくりを体験してもらうことができました。

今後の展望

― Markforged 3Dプリンターを今後どのように活用していきたいですか?

石川様:
今は治具、モックアップが主な使用用途になっていますが、最終製品にも適用していきたいと考えています。社内のものづくりスピードのさらなる加速を目指したいです。



― 3Dプリンターの技術や業界は今後どうなると思いますか?

石川様:
これからは金属プリンターが主流になってくるはずです。スライサーソフトも進化し解析ソフトウェアとセットで考えていく時代になると思います。AIを使ったCADシステムなどで更なるスピードアップを期待しています。



―ありがとうございました。

【会社概要】


アズビル株式会社
設立:1949年8月22日
ホームページ:https://www.azbil.com/jp/index.html

画像提供:アズビル株式会社様


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